介護施設向けのVR機器には、映像を体験する機能に加えて、利用者の動作や反応、課題の実施結果を記録できる製品があります。記録したデータは、個別訓練計画の見直しや職員間の情報共有を補助する材料として活用できます。
ただし、取得できる項目や測定方法は製品によって異なり、すべてのデータが自動的に介護記録やLIFEへ反映されるわけではありません。何を測定できるかだけでなく、取得したデータをどのように使えるかまで確認することが重要です。
VRを使ったアセスメントでは、利用者が画面内の課題へどのように反応したかを、コントローラーやセンサーなどを通じて記録します。実施回数、反応時間、手を伸ばした位置、課題の達成状況など、取得できるデータは機器の仕様によってさまざまです。
記録作業を自動化できれば、職員が実施結果を手作業で転記する負担の軽減につながります。一方、自動取得されるのは機器が対応している項目に限られるため、導入前に測定項目と記録方法を確認しておく必要があります。
機器が示す数値は、一定の条件下で記録された動作や反応の結果です。数値として表示されるため変化を比較しやすいものの、その結果だけで利用者の身体機能や認知機能、生活上の課題を総合的に判断できるとは限りません。
測定データは、職員による観察や既存の評価を置き換えるものではなく、判断を補助する情報と考えるのが適切です。利用者の体調や実施時の様子、日常生活での変化と組み合わせることで、数値の意味を適切に解釈しやすくなります。
動作を伴うコンテンツでは、手を伸ばした位置や動かした範囲、課題の実施回数、反応するまでの時間などを記録できる場合があります。こうしたデータは、同じ利用者が同一の課題へ継続して取り組んだ際の変化を確認する材料になります。
測定できる範囲や精度は、使用するセンサー、装着位置、実施姿勢などに左右されます。立位と座位では動作条件も異なるため、表示された数値を比較するときは、できるだけ同じ環境と手順で実施することが前提です。
認知課題やゲーム形式のコンテンツでは、正答率、選択した回答、所要時間、実施日、継続回数などを保存できる製品があります。訓練内容と結果が記録されていれば、利用頻度や難易度の推移を振り返りやすくなります。
視線追跡機能を搭載した機器では、見ていた位置や視線の移動、注視した時間などを記録できる場合もあります。ただし、視線データだけで認知機能を判定できるわけではありません。対応機器や分析方法、結果の位置づけを確認して扱う必要があります。
測定データは、利用者の変化を継続的に追う用途に向いています。同じ課題を一定の間隔で実施し、動作範囲や反応時間、正答率などの推移を確認すれば、訓練内容や難易度を見直す際の参考情報になります。
利用者ごとに身体状況や得意な課題が異なるため、他者との単純な順位付けには適しません。利用者本人の過去の結果と比較し、体調や実施条件による差も含めて変化を捉えることが、実務上の活用方法といえるでしょう。
結果を数値やグラフで表示できれば、担当者以外の職員にも訓練の経過を伝えやすくなります。カンファレンスや個別訓練計画の見直しに利用する場合も、記憶や印象だけに頼らず、実施履歴を確認しながら話し合えます。
利用者や家族への説明でも、継続回数や前回からの変化を示すことで、取り組みの状況を共有しやすくなります。ただし、数値だけを切り離さず、実施時の様子や日常生活で見られた変化と一緒に伝えることが大切です。
LIFEでは、利用者の状態やケア計画、訓練内容などについて、所定の項目に沿った情報を提出します。VR機器から取得したスコアや実施履歴が参考になる場合はありますが、機器の測定データだけで必要な提出情報がすべて揃うわけではありません。
また、データを記録できることと、LIFEや介護ソフトへ直接連携できることは別の機能です。LIFEへの活用を想定する場合は、出力形式、必要項目との対応、介護ソフトへの取り込み方法まで確認しなければなりません。
参考:科学的介護情報システム(LIFE)について|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00037.html)
機器を選ぶ際は、取得できるデータの多さよりも、施設の目的に合った項目を測定できるかを確認します。個別訓練計画の見直しに使うのか、実施履歴を管理したいのかによって、必要な機能は変わります。
測定姿勢、実施時間、機器の装着位置、職員による操作手順なども比較項目です。同じ条件で繰り返し実施できなければ、前回との数値差が利用者の変化によるものか判断しにくくなります。
取得したデータを施設内で活用するには、画面上で閲覧できるだけでなく、CSVなどで出力できるか、利用者情報と紐づけられるかも確認します。介護ソフトとの連携を希望する場合は、対応製品や連携範囲について個別の確認が必要です。
職員が無理なく操作できることに加え、初期設定やトラブル対応、データの確認方法に関する支援体制も重要になります。利用者情報を扱うため、アカウント権限、保存先、保存期間などの個人情報管理も選定時の確認事項です。
VR機器によるアセスメントは、利用者の動作や反応、課題の実施結果を記録し、経時変化の確認や情報共有を補助する手段です。職員の記録負担を軽減できる可能性がある一方、取得できる項目や自動化の範囲は製品ごとに異なります。
「何を測定したいか」「取得したデータを何に使うか」を先に整理し、測定条件の揃えやすさや介護ソフトとの連携方法まで比較することが重要です。LIFEへの活用を考える場合も、必要項目との対応を確認したうえで選びましょう。
なお、対象者別におすすめの製品を紹介した記事もあります。自施設に合った製品を探す際の参考にしてください。
介護向けVRは、利用者の機能訓練に使うものもあれば、職員教育や対応力向上に活用するものもあり、製品によって目的や使い方が大きく異なります。
そのため当メディアでは、「誰に使うか」という観点でVR製品を整理し、介護現場での活用方法や導入時のポイントを紹介しています。
自施設に合った介護VR製品選びの参考にしてください。
介護分野におけるVR製品はまだ数が多くありません。利用者・入居者用の製品は楽しみながら続けられる「継続性」や転倒リスクなどに配慮した「安全性」、介護職員用の製品は実際の現場を疑似体験できる「リアリティ」、研修の学びを次に活かす「再現性」、それぞれの観点から適した製品を紹介します。