デュアルタスク訓練では、身体を動かしながら計算や判断などの認知課題に取り組みます。VR・MRを利用すれば、画面に表示された対象を探す、色や形を判断して身体を動かすといった課題を設定できます。本記事では、介護施設での具体的な活用方法と機器選びのポイントを解説します。
デュアルタスクとは、足踏みをしながら計算するなど、2つの課題を同時に行うことです。介護施設で行う場合は、身体運動と認知課題へ同時に取り組む訓練を指します。身体だけを動かす機能訓練や、座った状態で問題を解く脳トレとは目的が異なります。
関連する言葉に「コグニサイズ」がありますが、これは国立長寿医療研究センターが開発した、運動と認知課題を組み合わせる特定の取り組みです。一般的なデュアルタスク訓練やVRコンテンツと同じ意味ではないため、区別して扱う必要があります。
参考:認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」|国立長寿医療研究センター(https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html)
椅子に座った状態で、指定された色や形を判断し、画面内の対象へ手を伸ばす方法があります。表示された順番を覚えて操作する、条件に合う対象だけを選ぶなど、上肢運動と注意・判断・記憶を使う課題を組み合わせられます。
着座であっても、すべての利用者に同じ動作を求めるのは適切ではありません。手を伸ばせる範囲や姿勢の安定性、指示への理解度を確認し、必要に応じて対象の位置や課題の難易度を調整します。
立った状態で表示された方向へ足を出す、指定された対象を選びながら足踏みするなどの方法もあります。身体を動かしながら周囲の情報を確認するため、運動だけを行う場合とは異なる注意の配分が必要です。
現実空間へ映像を重ねるMRは周囲を確認しやすく、立位や体重移動を含む課題で検討しやすい方式です。一方、VRでも、機器の仕様や運用環境によっては立位や体重移動を含む課題に対応できます。実施姿勢に応じてVRとMRを選ぶことが重要です。
VR・MRを利用すると、身体を動かす課題と、対象を探す・覚える・判断するといった課題を一つのプログラム内で進められます。職員がその都度問題を出さなくても、画面上の指示に沿って実施できる製品もあります。
ただし、2つの課題を同時に行えば、必ず高い成果を得られるわけではありません。運動と認知課題を一度に難しくしすぎないことがポイントです。利用者の状態を見ながら、それぞれの負荷を調整します。
デジタル機器では、対象の位置や色、出現する順番などを変えながら課題を進められます。正解時の音や映像によって結果が分かる製品であれば、利用者が進行状況を確認しながら反復しやすくなるでしょう。
課題の種類や難易度設定、結果表示の方法は製品ごとに異なります。また、コンテンツ内のスコアは医療的な評価や診断を示すものではありません。数値だけで判断せず、動作や表情、疲労の様子も確認します。
導入時は、まず運動と認知課題を別々に試し、利用者がそれぞれの内容を理解できるか確認します。そのうえで二つの課題を組み合わせ、身体負荷と認知負荷を分けて調整することが基本です。難易度は、間違いの多さだけでなく、動作の安定性や疲労も踏まえて設定します。
初回は座位・短時間から始め、映像酔い(VR酔い)や混乱、姿勢の崩れがないかを確認します。立位で実施する場合は、周囲の家具や他の利用者との距離を確保し、職員がすぐに支えられる位置で見守る体制が必要です。
機器を選ぶ前に、座位、立位、足踏みなど、施設で行いたい動作を整理します。利用者の身体状況や実施スペースを踏まえ、必要な動作に対応しているかを確認します。VRかMRかという技術名だけで決めるのは適切ではありません。
ゴーグル内の映像をタブレットやモニターへ表示できれば、職員が指示内容や進行状況を把握しやすくなります。立位で利用する場合は、周囲を確認できる仕組みや安全範囲を知らせる機能も比較項目になります。
利用者ごとに運動量や認知課題の難易度を変更できるか、短時間でも完結できるかを確認します。実施結果を運用に利用する場合は、記録できる項目や保存方法、職員間で共有できる範囲も調べておきます。
初期設定や操作説明、故障時の問い合わせ、コンテンツ更新などの支援内容も重要です。高機能であることだけを基準にせず、現場職員が継続して扱えるかという運用面まで含めて判断します。
デュアルタスク訓練は、身体運動と認知課題を同時に行う方法です。VR・MRでは、対象を判断して手を伸ばす、足踏みしながら指示に反応するなど、座位と立位の双方で課題を設定できます。
導入時は、利用者の身体状況、実施姿勢、課題の難易度、見守り方法を整理します。MRのほうが適する場合もありますが、技術の優劣だけで判断せず、施設で行いたい訓練と安全な運用方法に合う機器を選ぶことが大切です。
なお、対象者別におすすめの製品を紹介した記事もあります。自施設に合った製品を探す際の参考にしてください。
介護向けVRは、利用者の機能訓練に使うものもあれば、職員教育や対応力向上に活用するものもあり、製品によって目的や使い方が大きく異なります。
そのため当メディアでは、「誰に使うか」という観点でVR製品を整理し、介護現場での活用方法や導入時のポイントを紹介しています。
自施設に合った介護VR製品選びの参考にしてください。
介護分野におけるVR製品はまだ数が多くありません。利用者・入居者用の製品は楽しみながら続けられる「継続性」や転倒リスクなどに配慮した「安全性」、介護職員用の製品は実際の現場を疑似体験できる「リアリティ」、研修の学びを次に活かす「再現性」、それぞれの観点から適した製品を紹介します。