高齢者向けのケアプログラムや職員向けの研修において、仮想現実の技術を活用する事例が増加傾向にあります。安全に新しい取り組みを進めるためには、実施前に起こりうる不調を予測し、参加者から承諾を得る手続きが欠かせません。具体的な活用事例を交えながら、実施前に取得すべき書類の必要性や記載すべき項目について解説します。
医療や福祉の領域では、映像技術を用いた新たなアプローチが広がっています。参加者が当事者の視点を疑似体験できる仕組みは、将来のケア方針の検討や職員のスキル向上に役立つからです。具体的な導入事例を2つ紹介します。
将来の医療や介護について話し合う人生会議(ACP)の場において、映像コンテンツが活用されています。高齢者自身を主人公としたオリジナル動画である、すえさんの物語を視聴し、療養生活を1人称視点でイメージしてもらう取り組みです。
言葉だけでは伝わりにくい状況を体感できるため、本人と家族がケアの方向性をすり合わせやすくなります。
職員のスキル向上を目的とした研修でも、仮想空間での体験が取り入れられています。シルバーウッドの機器を用いた事例では、認知症による幻視などの症状を当事者の視点で体感。本人が感じている不安や恐怖を直接的に理解することで、日々の接し方を振り返り、対象者に寄り添ったケアを実践できるようになるでしょう。
新しい機器を利用してもらう際には、事前に書面で承諾を得ることが重要です。映像視聴にともない、参加者に予期せぬ身体的な不調を引き起こす可能性があるからです。
とくに注意すべき点として、目まいやふらつき、目の疲労、頭痛、発汗、吐き気などをともなうVR酔いと呼ばれる症状が挙げられます。高齢者の場合、ふらつきによる転倒にも注意が必要です。
安全にプログラムを運営するには、実施前に体調不良がないかを確認する手順が必須となります。少しでも不快感が生じた場合にはただちに参加を中止し、休息を優先するというルールを設け、参加者本人にあらかじめ理解していただかなければなりません。
実施側の責任として、想定されるリスクを包み隠さず説明し、納得のうえで参加してもらうプロセスが必要です。
参加者へ提示する書類には、倫理的な観点から明記すべき事項がいくつか存在します。事前に十分な説明を行い、安心して体験してもらうための具体的な記載項目は以下の通りです。
各項目をわかりやすく記載し、口頭での説明とあわせて提示します。想定される負担や対応策を明文化することで、参加者が内容を理解したうえで体験に臨みやすくなるでしょう。
高齢者向けのプログラムや職員研修に新しい技術を取り入れる際は、事前の体調確認といったリスク管理が欠かせません。安全な運用を実現するためにも、想定される症状を明記した説明文書や同意書を活用しましょう。
介護分野におけるVR製品はまだ数が多くありません。利用者・入居者用の製品は楽しみながら続けられる「継続性」や転倒リスクなどに配慮した「安全性」、介護職員用の製品は実際の現場を疑似体験できる「リアリティ」、研修の学びを次に活かす「再現性」、それぞれの観点から適した製品を紹介します。